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Channel: 議員自慢の彼女
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会いたかった

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議員宿舎で休んでいたら 産んだ覚えのない娘が、突然、訪ねてきて、 「お母さん会いたかった」 と私に云った。 色が白くてか細くて、いかにも幸うすそうな娘だった。 私は無意識に探していた。 その娘と私の似ているところを だけど、探し出せなかった。 その娘は、私にあまりに似ていなかった。 目も、口も、鼻も、まゆげも、なにもかも。 「お母さん会いたかった」 娘はただただそればかりをくりかえす。 「お母さん会いたかった」 娘は、ただただそればかりをくりかえす。 ぞっとするくらい無表情で ただただそればかりをくりかえす。 議員になってから、忙しすぎて家族さえ作ることも出来なかった。 「いいかげんにして、私はあなたのお母さんなんかじゃない。あなたを産んだ覚えなどない」 私は、耐え切れなくなってついにその娘に言い放ち、議員宿舎から追いかえそうとした。 そのとたん。 「パキン」 と音がして、 その子は、議員宿舎でもろくも崩れ去っていった。 私は、ほうきとチリトリを持ち、玄関に散乱した破片を集めていた。 破片を集めながら、ふと思い出していた。 そういえば、あの娘の、あのまつげ、 あのまつげだけは、ほんの少し私と似ていたかもしれない。 だけど、見事に砕け散ってしまった、 その破片からまつげを探し出すことは、 すでにどうにも 不可能だった。

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